洒落た言葉
をかませる男性というのは尊敬に値すると思う。
その言葉が恋愛に導く
こともあると思う。
それができる日本人には今までお目にかかったことがない。
しかしイタリア人となると別である。
おシャレな言葉をサラリと言える人がごまんといる。
ある時、予約のアレクサンドラがBARにCAFFÉ
(カッフェ=エスプレッソ・コーヒーのこと)を買いに行くと言い、
ついでにわたしたちの注文を聞いてくれた。
「何が欲しい?」。
「わたしカップッチーノ!」、
「チョコレートのお菓子買ってきて」、「僕はカッフェ」。
そしてポーター最若手のフェルナンドはこう言った、
「Per me, un bacio!
(俺にはキッスをくれ!)」。
くーっ。いい切り返しではないか。
しかも22,3の若い男の子がコレを言えちゃうのだ。
こんなセリフが似合うのは日本人では稲垣吾郎
くらいのモンだろうと思うが、
イタリア人男性の9割が稲垣吾郎の素質を持っている。
慣れていないわたしは毎度、日本で聞いたこともないこんな気の利いた言葉に感動し、
感心するばかりである。
もっとも日本語でこんなこと言われたら気持ち悪いのかもしれないけど。
最近、職場の男性陣がやっているCALCIO(カルチョ=サッカー)の
練習試合にくっついて行っては観戦しているのだが、
そこでもこんなことがあった。
18人のメンバーが、試合をするために9人と9人の2チームに分かれたので、
わたしは「コレ、何の基準で分けてんの?」と聞いた。
すると、世界中の女性に八方美人
なマッテオがこう言った。
「あっちは彼女有りチーム、俺らは彼女無しチームだよ」。
まあよく言うよ。
職場の男性陣はほぼ全員が結婚しているかステディな彼女がいるから、
そんなハズはないのだが(適当にチーム分けしたに決まってる)、
いい答えであるなあ、とうならされた。
さすが、ドン・ジョヴァンニを生んだ国
である。カサノヴァの国
である。
気障と言えばそうだが、これも一つの優れた能力だと思う。
お洒落な発言がとっさにできるというのは。
その一方で思うのが、特に女性を褒める時などに、
俗に言う「セクハラ発言」
が多いということである。多すぎる。
うちの職場、これが日本やアメリカだったら男性全員とっくに
セクハラ理由でクビ
になっていると思われる。
想像はつくと思うが、
女性の体のことやセックスに関することなどを露骨に
口にするのだ。
こんな連中に囲まれて、こんなわたしにも語彙が増えてきた。
今までは正当にイタリア語を学んできたが、
最近はそうではない
覚え方をしているような気がする。
よく話す相手が田舎弁丸出し
だったりするのだ。
ポーターのリーダー的存在、ファビオはCIOCIARIA
の人である。
この人の言っていることは2割くらいしか分からない。
あとの8割は何となくの雰囲気と分かった2割からの推測。
それで100%わたしたちの会話は成り立つ。
何しろ早口だし、
一つの文に放送禁止用語を2個ずつくらい入れて話す。
卑猥な放送禁止用語(PAROLACCIA
=パロラッチャ)は日本人の
わたしには
慣れていないせいもあって使い方すら分からなかったが、
この人のおかげで(せいで?)ポイントがつかめてきた。
フェルナンドは生粋のローマっ子
である。
東京に江戸訛りがあるように、イタリアの首都ローマにもローマ弁
がある。
ロマニスタ(プロサッカー、セリエAのチームASローマのファン)
でもあるから、ローマを讃える歌、他チームをこてんぱん
に言う悪口を
わたしに伝授する。ものすごいローマ弁である。
この2人に共通して言えるのは、決して標準イタリア語を話さない
ことである
(話せない
のかもしれない…)。
普通ならいたいけな外国人の女の子には、ゆっくり優しく正しい
イタリア語で話し掛けるだろうが、彼らはそれをしない。
ベラベラベラベラ、 方言でまくしたてる
。
しかし彼らと話すことがわたしの生きたイタリア語習得法
だと思っている。
明日もまた仕事、さあてどんな新しい言葉を覚えるかな?
(2003年6月)